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新しい当たり前「したいことをして病を治す!?」OTの役割
皆さん、こんにちは。OTの平川です。今回は、「したいことして病を治す」というリハビリテーションの新たな視点についてお話ししたいと思います。
先日、リハビリ病院を退院したばかりのクライアントと初回面談を行いました。クライアントは退院後の生活で「料理をしたい」という希望を語りました。入院中は手の訓練が主だったため、ずっと料理をしていない・・・このまま一生料理ができないのではないか・・・という悩みを抱えていました。クライアントはこの面談でほとんど口を開かず、隣にいた娘さんに返答の全てを委ねるほど、気力や自信を失っている印象がありました。しかし、この料理に対する思いだけは自ら語っており、料理がクライアントにとって非常に大切な一つであることが分かりました。
心やメンタル、精神的な視点というのはリハビリテーションにおいて重要でありながら、しばしば見過ごされがちです。しかし、この視点を取り入れることには、大きな可能性が秘められていると感じています。クライアントの内なる想いや意志に目を向け、それを実践(作業)につなげることができる包括的なOTの支援は、計り知れない成果をもたらすことがあります。
実際には、このクライアントの「料理をしたい」という内なる想いを、二回目の訪問で早速味噌汁をつくるという実践につなげました。私は初回面談時から小声でボソッと話してくれたこの内なる想いこそ、自己肯定感や元気を取り戻すきっかけになると感じたからです。クライアントは片麻痺の後遺症もあり、常時車いすに乗車している状態。この時はキッチンに立つことも困難な状況でしたが、OTはクライアントに合わせて支援を提供することができます。この味噌汁を完成させた瞬間、クライアントと娘さんは喜びに満ちた表情を見せてくれました。この心からの笑顔は、私がやりがいを感じる瞬間でもあります。
私は、クライアントが意志の伴った作業(実践や活動)に取り組めるように支援することはOTの役割だと思います。しかし、保険制度の中では実践への即時展開は難しいこともありますし、クライアントが自らの内なる想いを見つけることやそれを聴くこと自体も困難なことがあります。しかしながら、私は実際にこのような実践を通じて、クライアントの心が動く瞬間を何度も目の当たりにしてきました。この心パワーは、何もできないと感じたり、心が元気でないときこそ、試してみるべきアプローチなのです。何か行き詰まっていたり上手くいかないと感じる時には、この「したい事をして病を治す!?」という新しい視点を思い出し、発想を変えてまず試してほしいと思います。
クライアントが自分のやりたいことを実現し、生活に意味を見出すことができるよう、私もOTとしての専門知識や技術を磨きながら、共に成長していきます。クライアントの内なる想いを大切にし、彼らが意欲的に参加できる活動を見つけ出し、それを実現するための適切な支援を提供していきます。
以上、新しい当たり前になりうる「したいことをして病を治す」について私の考えと経験を元に共有しました。皆さんの生活を豊かにするヒントになれば幸いです。